凛という同級生の友人がいる。
小柄で、笑顔のかわいい女の子だ。
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この学校に入ってから知り合ったのだけれど、基本的にはサバサバした明るい性格で、第一印象も面白い奴というものだった。
実際、その印象通り気を遣わずに付き合える相手だ。
バカ話でもエロ話でも喜々として乗ってきてくれるし、いちいち反応も豊かだ。
そんな子だったから、打ち解けるまでは早かった。
他愛もない、時にはえげつない話にもケラケラと笑う彼女の反応を、僕はいつしか楽しみにするようになっていた。
それでいて、彼女には何を考えているかよくわからないところもあった。
いつも、彼女はつかみ所がない。
僕はそれほど女の子との付き合いが多い方ではないけれど、それを差し引いても他の女子以上に思考回路が読めないのだ。
普通に話しているときでも、本音の部分に立ち入ろうとすると、するっとすり抜けて言ってしまう感じだ。
それに、小悪魔というのだろうか。
相手を手玉に取るのがうまいというか、そういうところがあった。
もちろん、僕たちの年代の話だから、手玉に取るとは言ってもかわいいものだ。
せいぜいからかってくるくらいだし、それにしたって言葉のうまさというよりは雰囲気的なもの。
だけど、それがきわどいのだ。
特にエロ話をしているときは顕著で、僕はただの友人とはわかっていながらドキリとすることも少なくなかった。
意識的なものか無意識なのかはわからない。
生まれつきの性質なのかもしれないが、そうだとしたら一つの才能だと思う。
そういうところはあったが、凛との付き合いは楽しいものだった。
田舎の学校だったから娯楽が多いわけでもない。
だから、凛とのつきあいは僕にとっては最上級の遊びともいえた。
そんな彼女との関係だったが、一度だけ友達としての一線を越えたことがある。
去年の夏のことだ。
僕はこれでも面倒見はいい方で、同級生や教師から頼まれごとをすることも少なくなかった。頼りにされるのはまんざらでもなかったから、気が付くと僕はいろんな雑用に首を突っ込んでいた。
ただ、中にはいい加減な奴もいて、ときどきとんでもなく面倒な話を持ち込んでくる奴もいた。
その日、僕は放課後だというのに学校にいた。
具体的な内容を書くと長くなるので省くが、最初に聞いたときはちょっとした雑用という話だった。
けれど、いざ始めてみると、ちょっとなんてものじゃなかった。
しかも、その頼んだ張本人は急用だとか言ってさっさと帰ってしまったのだ。
さすがに、僕も帰ろうかと思ったくらいだ。
だが、少し面倒くさい教師が絡んだ内容だったので、今更断れなかった。
もちろん教師に言えばなんとかなっただろうが、その教師は校内でも屈指の関わりたくない相手だ。
まだ自分でさばいた方がマシだと僕は判断した。
うちの学校には、クーラーなんて文明の利器はついていない。
窓を全開にして作業をしたものの、汗が噴き出してくるのは止めようがなかった。
授業が終わってからそんなに時間は経っていなかったが、校内には早くも人けがなかった。
運動部の練習の声さえ、今日は聞こえてこない。
この暑さだ。少々体力があったって、とても耐えきれないということなんだろう。
そんな中黙々とひとりで作業をしていると、俺、何やってるんだろう…という気分になってきた。
そんなとき、ふいに教室のドアがガラリと開いた。
そして、凛がひょっこりと顔を出したのだ。
「あ、やっぱりいた」
「あれ、どうしたんだよ?なんか用事でも?」
「それはないけどさ。さっきなんか頼まれてるなあって思ってたから、ちょっと差し入れでもと思って」
見れば、凛は近所のスーパーで買ったらしい、小さな買い物袋を下げていた。
半透明の袋には、アイスバーらしきものが2つ、入っている。
「マジ?すごいありがたいわ」
「そうでしょ?この暑さだから、やっぱりアイスよね」
凛は近寄ってきて、僕にアイスを一本手渡した。
袋越しでも、ひんやりとした冷気が伝わってきて、心地よかった。
「溶けちゃうからすぐ食べてね。でも…」
「どうした?」
「やっぱ、あいついないか…調子いい人だとは思ってたから、もしかしたらとは思ったけど」
「あいつが張本人なんだけどな…」
「もう帰っちゃえば?別にあなたの責任じゃないじゃない」
「そうなんだけどな。頼まれた手前なあ…」
「…はあ。あなた、いい人過ぎるよ。そういう所、嫌いじゃないけど」
「光栄だよ」
袋をびりっと破り、アイスにかぶりつく。
さわやかなソーダ風の味が、口の中で弾けた。
この暑さの中では、最高の差し入れだった。
「まあ、せっかく買ってきたしなあ…わたしももらっちゃうね」
凛は僕の隣の席に腰を下ろし、もう一本のアイスを取り出した。
さすがに僕と違って、大口を開けて食いついたりはしない。
すこし溶け始めた表面を、ぺろぺろと舌で舐めていく。
彼女の赤い舌が、アイスのブルーの表面をちろちろとなぞっていくのは、はた目からみても妙に艶めかしかった。
僕は少しドキドキしながら、できるだけ彼女の方を見ないようにしながらアイスを平らげた。
「さてと…じゃあ、やるか」
「ちなみに、どのくらい終わってるの?」
「こっちが終わった分」
「…まだ全然じゃない…これ、ひとりでやるつもり?」
「ああ。まあ、今日中には終わるだろ」
「ある意味、尊敬しちゃうよ。ちょっと呆れちゃうけど」
「そういう性分でして」
「しかたないなあ…手伝ってあげる」
「え?いいのか?」
「どうせ暇だしさ。それに、見てられないし」
「…悪い。頼むわ」
「借しひとつね」
「早めに返すよ」
凛は机をごとごとと動かして、僕と差し向いになって座る。
そして、いつもどおりの笑顔を浮かべて元気な声でいった。
「じゃ、はじめよっか」
2時間ほど経った。
夏だから、まだ日は高かった。
あけ放った窓からは、青い空がどこまでも広がっていた。
セミの声があちこちから聞こえてうるさかったけれど、それはそれでいかにも夏という感じで悪くない雰囲気だった。
それでもさすがに遅くなってきたせいか、窓からのかすかな風も多少なりとも涼しくなった気がする。
作業はもう少しで終わりそうなところまで来ていた。
凛はまだ時間は大丈夫なんだろうか。
黙々と作業してくれている彼女の方を、ちらりと見やる。
軽い雰囲気の子ではあるんだけれど、真面目な時には別人のように真剣な顔になる。
今がまさにそれで、僕は普段とは違う彼女の表情を、大人っぽいなあと思いながらチラチラとみていた。
彼女も相当暑いのだろう。
額はもちろん、半袖から露出した細い腕にも汗の粒が浮き出ていた。
この調子では、制服の白いブラウスの中も、かなり汗びっしょりだろう。
実際、ここからでも布地が汗で湿り気をおびているのがわかる。
そして…
僕はつい、彼女の身体をじっと見てしまった。
びっしょりとまでは行かないにせよ、かなり湿った薄手のブラウスだ。
それを差し向かいの距離から見ているのだ。
水色のキャミソールがハッキリと透けて見えた。
彼女は胸はそれほど大きくないけれど、この場合、そんなことは大して問題じゃない。
いわゆるスポーティな奴じゃなくて、女の子らしいレースの飾りが派手になり過ぎない程度についた、下着としてのキャミ。
それが、僕の視線をくぎ付けにした。
もともと異性として意識することも少なくないだけに、つい見ずにはいられなかったのだ。
ただ、凛はカンはよかった。
顔を上げないまま、彼女はさりげなく言った。
「…何見てるの?手、止まってるよ?」
別に怒った風ではなかったけれど、ビクリとして僕は作業に戻った。
「ねえ?」
「なに?」
「あなたもやっぱりHだよね」
「うっ…」
「別にいいんだけどさ。あんまりバレバレだからおかしくなっちゃった」
チラリと凛の顔を見ると、ニヤニヤと笑っていた。
僕は、なんとも恥ずかしい気分になった。
「し、仕方ないだろ…」
「仕方ない、か…まあ、そうなんだろうけどね」
「そうだって。男なんだしさ」
「…ねえ?」
ふと、凛の声色が変わった。
普段よりも少し低い、小さな声。
僕を手玉にとるような時、彼女は大体こうした声になる。
「さっき、貸しひとつ作ったじゃない?」
「そうだな。早めに返さないとな」
「それさあ、あとで早速返してもらおっかなって思って」
「あとでか?そりゃ、できる内容ならもちろんいいけど?」
「その点は大丈夫。どっちかというと、喜んで返したくなると思うよ?」
「??なんだそりゃ…?」
「まあまあ、まずは作業終わらせちゃお?」
「…ん、そうだな…」
はぐらかされるのはいつものことだったが、それでも普段以上に言っていることの意味がよくわからなかった。
だってそうだろう。
想像しろという方が無理な話だったのだから。
なんにせよ、ほどなく、頼まれていた雑用は全部終わった。
「あーー…、終わったあ…」
「お疲れ。ホントありがとな」
「どういたしまして」
さすがにもうかなり時間が経っていた。
まだ外は明るいには明るかったけれど、もともと人けのなかった校内は今はもうすっかり静まり返っている。
僕たちの声以外には、セミの鳴き声しか聞こえてこない。
それは、どこか物寂しさを感じさせた。
「さて、と。じゃあ、借りを返してもらおうかな」
「ああ、さっきの話か…何すればいいんだ?」
「それは後で。この書類、どうするの?」
「あ、ああ。職員室に持って言って終わりかな。重いし、それは俺がやるよ」
「そう。じゃあさ、それ終わったら東校舎の屋上に来てよ」
「屋上?」
彼女の考えていることがまったくわからない。
東校舎は学校の端にあり、校内でも一番高い建物だ。
専門教科の教室が多いこともあって、行くこと自体はわりと多い。
けれど、その屋上となると、まず行くことはない。
行くような用事がないのだ。
「この時間にか?大体、開いてるのかよ、あそこ」
「もちろん、普通に行ったら開いてないけどね」
そういって、凛はポケットから見慣れない鍵を出して見せた。
「うちの部活で結構借りてるの。今日もちょっと借りっぱなしだったから、ちょうどよかった」
「そうなのか…でも、なにする気なんだ?」
「来ればわかるよ。じゃあ、待ってるから。待ちぼうけだけはさせないでね?」
「させるかよ」
そう答えると、彼女は満足そうにニッコリ笑うと立ち上がり、スカートをひるがえして踵を返した。
ふわりと浮き上がったスカートから、女の子らしい形のいい太ももがチラリと見えた。
自然と、僕の目は彼女の後姿にひきつけられていた。
もうスカートは太ももを覆っていたけれど、ひらひらと揺れる裾が僕の劣情を刺激した。
白いブラウスの背中には、やはりキャミソールの紐が浮き出ていた。
「…またみてる」
「うっ…」
本当にカンがいい。
振り返ってもいないのに、彼女はいたづらっぽく声をかけて教室から出て言った。
職員室に紙の束を届けたあと、約束通り僕は東校舎の屋上に向かった。
ドアをあけ放つと、広い青空が目に飛び込んできた。
もっともさすがに時間が時間だけに、西半分は赤く染まりはじめていたけれど。
「おい、きたぞ。どこだー?」
「ここだよ?」
思いもよらない方向から凛の声がした。
上の方。
とはいっても、この上となると今昇ってきた階段部分の屋根しかない。
「今入り口でしょ?裏手に回って」
「あ、ああ…」
言われた通りに裏手に回る。
予想通り、階段部分の屋根の上に彼女はいた。
大きな給水タンクのたもとで、僕を見下ろしている。
だが、僕はすっかり絶句してしまった。
彼女は屋根の上で立っている。
夕日を身体半分に浴びて、彼女の身体はオレンジ色に染まっていた。
背後には、大きな貯水タンクと、その向こうに深い青と赤の入り混じった大空。
そんな背景の中で立つ彼女の姿は、一幅の絵のようだった。
そのスカートが、風に吹かれてひらひらと揺れ、ときどきふわりと浮き上がる。
下にいる僕の位置から見たら、スカートの中は丸見えなのだ。
見慣れた制服の布地の下で、裏地とキャミソールの裾がこれまたヒラヒラと揺らめき、存在を主張している。
それだけでも凝視するのがはばかられる状態なのだけれど、問題はそこじゃなかった。
大きく浮き上がったスカートの奥の奥。
そこに見えたのは、隠すものもなく露わになった彼女の股間だった。
彼女は下着を履いていないのだ。
普段見慣れた自分の股間とは全く違う、女の子のそれが、僕の目前にさらされていた。
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